第166回国会 安全保障委員会 第7号


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平成十九年四月十日(火曜日)
午後三時開議



○遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 参考人の先生方、大変お忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。

 まず、抑止力の維持という観点なんですけれども、江畑先生、川上先生に御質問したい。

 江畑先生の御本なんかを読ませていただきますと、座間には米軍団第一司令部が出てくる、逆に沖縄からは海兵隊の司令部がグアムに移転する、この逆の動きということで記述をされております。座間の場合には、これはあくまで受け入れの体制であって、有事の際に、いわゆる旅団戦闘チーム等が米本土、アラスカ、ハワイ等から来るであろうという想定であるというふうに記述されております。

 何でこういう逆の動きをするのかということなんですけれども、沖縄の人から見れば、海兵隊の司令部よりも戦闘部隊が移転してもらった方がありがたいんじゃないか、これは当然だと思います。なのに、今回は、司令部の方が移転して戦闘チームは残る。もしこの動きで抑止力を維持できるのであれば、例えば、戦闘チームがグアムに移転して、いろいろな装備等は逆に事前集積で沖縄に置いておけばいい話であって、そういうふうに考えれば、戦闘チームを逆にグアムに移転してもらった方が、いろいろな意味で都合がいいんじゃないかと思っております。

 決まってしまった話で、今すぐどうこうというのはありませんけれども、今後の課題として、沖縄の負担をより軽減していくためにも、この点についてどう考えられるか。これは両先生にお伺いしたいと思います。まず江畑先生からお願いします。

○江畑参考人 お答えします。

 この点に関してはむしろ新崎参考人にお聞きなさった方が、現実の沖縄の実態をよく御存じですから適切かと思いますけれども、一応私の方から簡単に申し上げれば、まず陸軍の場合は、遠藤議員御指摘のように、要するに有事の際の受け入れ、これは何も韓国だけとは限りません。この先に、場合によっては台湾方面あるいは東南アジア、南アジア、そういう方面に米軍が、先ほどから各参考人が申し上げておりますように、短時間に米軍部隊を展開するということのために受け入れる体制、太平洋を越えたこちら側で受け入れたい。

 なぜかというと、米軍陸軍部隊というのは、九十六時間で一個旅団、一個旅団というのは大体五千人から六千人の規模ですけれども、それをどこの地域でも展開できるようにという態勢を整えるように今変更、変革はしておりますが、現実にはかなり重武装な部隊で、基本的には、本当に身軽なアメリカの海兵隊のような歩兵部隊とは違うところがあります。そのために、それなりの装備と物資を蓄積、太平洋を越えて持ってきて、そこで戦闘準備を整えてから行かなきゃならない。もちろん、日本が外敵の脅威にさらされた場合には、それを助けるという意味もございます。

 ですから、そこで、受け入れ体制及びその場所、そのための施設、特に相模総合補給廠は非常にそういう点では有力な機能を持っていますが、そういうものを確保しておきたい。

 ただ、どこへいつ必要になるかわからないから、海外駐留米軍というのはやはり金がかかりますので、特に陸軍の場合には、今申し上げたように、いろいろ重装備を持っていますので金がかかりますから、それを軽減する、必要のないところに平時から置いておく必要はないというふうに考えているんです。それはわかるんです。

 ただ、わからないのは、まさに遠藤議員の御指摘にあったとおり、海兵隊のグアム移転でして、おっしゃるとおり、全くこれは個人的な意見ではございますけれども、戦闘装備を、まさにグアム島やサイパン島にありますけれども、通称事前集積船と呼んでいますが、装備と戦闘物資を載っけた貨物船と同様なものを沖縄の港、ないしは場合によっては陸上に置いておいて、戦闘部隊だけをすぐに持ってくれば、人間だけは飛行機で持ってくれば済むはずですから、それで済むはずなのに、なぜ司令部だけを後方に移動したのかということは、正直これは我々国民は知りません。つまり、政府から説明はございません。むしろ国会においてそこら辺を、どうしてそうなのかということを明言していただければいいと思います。

 そこにおいて、唯一の説明らしきものは、そこに戦闘部隊を置いておくことによって抑止力が発揮されるということなんですが、緊急に展開できる、しかもグアム島と沖縄との距離というのはそれほどの大きなものではございませんので、その機能がありながらどうして抑止力が低下するのか。むしろ、有事の際にアメリカの本土からの第一海兵師団なんかも受け入れられるだけの、陸軍と同じような、受け入れ機能だけを沖縄に維持しておくことによって抑止力はむしろ高まるんではないかという気は私個人はいたすんですが、正直、どうしてこのような形になったのかというのは、私にはわかりません。

 以上でございます。

○川上参考人 これはあくまで個人的な研究者としてのお答えでございますけれども、第三一海兵遠征隊、いわゆる31MEUでございますが、この機能の面からでございます。つまり、31MEUは、沖縄から台湾それから朝鮮半島へ一日で展開可能でありますけれども、もし仮にこれが国内の富士へ移設された場合には、朝鮮半島へは二日、台湾へは三日かかってしまうわけでございます。

 こういった台湾海峡有事の救出作戦、日本人もおります、そういう救出作戦、それから、そのほかの第三国が宮古それから尖閣列島に上陸を試みようとした場合には、31MEUは恐らく自衛隊と共同して対処することになる、ホープフリーなんですが、そう思いますが、こういう場合には、一日、二日のおくれが致命的になってしまう。現在の31MEUにはそういう機能があり、それが必要であるというふうなことであります。

 それから、普天間飛行場の回転翼機というのは、日常的に活動をともにする他の組織の近くに位置せねばならないというふうなことがありますので、ヘリ部隊を含めた実戦部隊の分散化は極めて困難である。これは31MEUのエレメント、つまり歩兵大隊、砲兵中隊、ヘリ部隊、こういうものを分散化した場合には、集結に時間がかかる、六時間以内の出動は不可能であるというふうなことで、31MEUの沖縄への移駐というのは継続して行うというふうなことだと私は思っております。

○遠藤(乙)委員 次に、坂元先生にお伺いをしたいと思います。

 先生、グアムへの移転、またグアムの地政学的、戦略的位置を大変高く評価されておられまして、私も同じ見解を持っております。特に、三月の上旬に委員会の理事でグアムの現地を視察いたしまして、それによって非常に、まさにその感を深くしたわけですけれども、私が一番印象に残ったのは、グアムには基地はあっても基地問題がないということなんです。

 当初、沖縄と同じような状況かなと思って、グアムに移転するのは、負担を逆に移転するのかということで、そういった面でいろいろ心苦しい点もあったんですが、実際に現地を視察してみてわかったのは、グアムの場合、アンダーセン空軍基地それからアプラ海軍基地、いずれも島の外れにあって、人口はほとんど中央部にあって、いわゆる民間地域と基地が全く截然と分かれております。沖縄のような、いわゆる人口密集地域に危険が隣り合わせというような状況はないということで、イデオロギー的な反対論は別として、そういった現実的な基地問題という意味では存在しないということはよくわかりましたということと、もう一つ、グアムが、今ほとんど観光産業が中心でありますが、必ずしも観光産業の展望がよくない。特にグアムの場合、ほかと比較をして、観光地としての国際競争力は必ずしも十分ではない、私はそういう印象を持ちました。

 そういった中で、今後、グアムの経済の安定、雇用機会等を考えますと、逆に海兵隊等が移転してきて、基地機能が強化されて、地元のそういった雇用機会や経済活性化を考えますと、安定した基地経済への依存度を高めることが非常に賢明な選択であろうというふうなことを実感した次第でございます。これはグアムの知事もそのように言っておりまして、よく住民にもそういったことを説明しながら、これを逆にグアムの発展の機会としてとらえたい、実はそういった回答もあって、非常に私も印象深く思った次第でございます。

 そういった意味で、今回の沖縄からグアムへの海兵隊移転は、私は一石三鳥であると思っておりまして、沖縄の負担軽減、グアムの地域の振興、それからもう一つは、先生がたしか論文で触れておられましたが、日米共同訓練、これは、非常にグアムの地域はいろいろな意味で制約が少なくて、存分な訓練ができるだろうということで、こういったことを総合しますと、多分グアムは今後、日米安全保障協力、日米同盟協力の象徴的な地位になっていくだろうという感じがいたしました。

 また、グアムの地域は、かつて二万人の日本軍が玉砕をした地、にもかかわらず、グアムの島民は非常に親日的で、今や日本の観光客が七割、八割を占めているという状況でありまして、そういうことも考えると、グアムの地域振興についても日本としても協力してあげることが必要だというふうな見解を持ってまいりました。

 そんな意味で、一つ先生の御指摘の中で、今後、移転後のグアムのあり方、また移転後の海兵隊の使い方といった点で指摘をされておられましたが、グアムにおける日米共同訓練の問題についてどう思われるかという点が一つ。

 もう一つは、これは私の非常に個人的な印象なんですが、グアムにこれだけの緊急展開能力、特に、海兵隊があり、また今後、グローバルホーク、三十時間以上無人で偵察できる高性能偵察機ですが、偵察能力も高まるというわけです。

 これはある意味では、アジア太平洋地域における災害に対する緊急援助能力が極めて高くなるわけであって、ある意味では、グアムへのこういった今回の移転も含めて、逆に今後、海兵隊の、災害派遣と言ってはなんですけれども、いろいろな、今までインドネシアの津波、あるいは先般のソロモンの津波、地震等を考えますと、また異常気象等を考えますと、この地域、災害救済のニーズが非常に高まるわけであって、こういった能力を一つは災害派遣にも使うようなことを逆に日本として提案していくようなことも大事じゃないか。そうすることによって、海兵隊の存在というものをより受け入れられ、理解されやすくするという点もあるかと思っております。

 この共同訓練の問題と、それからアジア太平洋地域における災害派遣へ海兵隊を活用する、二点につきまして先生の御見解をお聞きしたいと思います。

○坂元参考人 私、先ほどお答えの中で、世界の中の日米同盟というものを、一昨年と申しましたが、これは昨年、小泉・ブッシュ会談で強く打ち出されたものでありました。それが打ち出されて、世界の中の、こう言っておりましたら、北朝鮮の核実験とミサイル発射が起こりまして、やはり日米同盟はアジア太平洋の、極東の安全のためにあるんだということが明確になったわけであります。

 このグアムの話は、朝鮮半島の危機というよりも、その朝鮮半島の問題に一応片がついた後に、中長期的にアジア太平洋の抑止力のあり方、抑止力のための日米の協力のあり方に物すごく関係するところではないかというふうに思っておるわけであります。ただ、ちょっと先のことといえば先のことなんですが、少し時間的余裕がある間に、グアムについてのいろいろなアイデアを、今遠藤先生がおっしゃったようなアイデアを出していくということは非常に大事じゃないかと思います。

 特に今、災害派遣のことをおっしゃられましたが、アメリカ側でも日本の軍事力の使い方には制限があるのはよくわかっているから、ミリタリー・オペレーションズ・アザー・ザン・ウオーでしたか、軍事以外の軍隊、自衛隊の使い方というものをよく考えて、そして日米が協力できることを探っていくとなりますと、津波の災害に見られたような、ああいう大きな災害に海兵隊あるいは自衛隊が協力して当たるということにこのグアムが何か使えないか、そういうアイデアを出していくということが日米関係の今後にとって非常に大事じゃないかなと。いつも受け身で、何か相手から言われて、それに仕方なく従っていって、ああ、これ仕方ないね、こういう話ばかりでは活力が出ませんので、これはそうしていただきたいと思います。

 さはさりながら、やはり、これは軍隊の話でありますから、日米の共同訓練によりまして、相互運用性、それから即応性、そういうものを訓練によって高めていくということが非常に大事でありまして、今、遠藤先生、御視察のことについておっしゃられましたけれども、グアムがそういう受け入れ体制というものが非常にあるということで、沖縄から施設をグアムに移すということが、その意味でも、関係者にとってすべてにプラスになるというようなところがあるのではないかと思います。

 グアムの訓練につきましては、これはもう全部江畑先生のお話から受け売りでありまして、勉強させていただいているわけですけれども、グアムの近くには、この地域では有数の射撃訓練場というものがございまして、日本では国内でなかなかできない訓練ができるというようなこともございますから、ますます今後、こういう訓練を積み重ねていく。これは陸上、航空だけでなく、海上自衛隊についてもそういうものを、訓練ができるようにすればいいのじゃないかと思います。

 グアムとかで訓練ができるということになりますと、自衛隊の士気にとってもよろしいのではないか。定期的に多くの自衛隊員がそこを訪れて訓練、少しは観光もできるということになれば、それはよろしいのじゃないかというふうに思ったりもいたします。

○遠藤(乙)委員 先生の御意見、非常に心強く思いました。

 私、もう一つ、グアムは基地の島になるんでしょうけれども、場合によっては基地観光というカテゴリーもあり得るんじゃないか。F22をウオッチング、ホエールウオッチングじゃなくてF22ウオッチングとか、そういうこともあれば、かなり安全保障オタクの人には観光の一つのあれにもなるだろう、まさに観光振興の一つのあれになるかなと、若干これは余談ですけれども、思った次第です。

 次に、新崎先生にお伺いしたいと思いますが、先生のお話はかなり懐疑的、そもそもこの法案に御反対、また、今回の在日米軍再編も問題があるということを御指摘でしたけれども、現実問題を考えると、沖縄の負担軽減という観点から見ると、現状固定化かあるいはパッケージかという、この二つしか現実的にはないかと思います。もちろん、先生のお立場からいえば両方とも非常に悪いということだと思いますけれども。

 その上で、今回のパッケージは全く改善にはつながらない、沖縄の負担軽減の改善にはつながらないというふうに見ておられるのか、あるいは、両方とも悪いけれども、このパッケージは現実的にはより悪くない方向には、両方とも悪いけれども、より悪くない方向には変わるというふうに見られておるのか、その辺、少し本音の部分でお話をいただければと思います。

○新崎参考人 現状なのか、それとも再編によるパッケージによる変化の方がいいのか、現実問題としてというふうに前提をされました。私は、現実問題というときに、現実問題とおっしゃる方が本当に現実を見ているのかなということをまず考えざるを得ません。今、現実問題として、現状かパッケージ、あるいはパッケージ論とおっしゃいましたけれども、要するに米軍再編かという二者択一以外の道はないのかという発想は、日本の政治家にはないのかと私は思ってしまいます。

 今のような現状は突如として起こったわけではなくて、先ほど私があえて限られた時間の中で沖縄戦までさかのぼって話を始めましたけれども、今、例えば沖縄の位置あるいは地位というのが、この二つの選択肢以外に、例えば、基地をなくしたらどういうことが起こるのか、そういう発想が全くなくていいんだろうか。例えば、基地がなくなったら北朝鮮からミサイルが飛んでくるのか、あるいは、中国が先島に、宮古とか八重山に侵攻してくるのか、そういうことになるんだろうか、なるということを前提にして何か話が進んでいる、このところに私はやはり基本的な疑問を持ちます。

 それから、この再編円滑化法案について言いますと、特に私が感じるのは、これまでも基地を維持するために、経済振興、昔は、基地維持のために経済振興とは言わないでほしいというのが、私たちはそういう発想は持っていないというのが、橋本首相の段階まではむしろ積極的に強調されていました。私たちがそれは結びついていると言うことについて、それは非常に勘ぐりであるとおっしゃっていたのですが、今やそれをむき出しに言うようになってきているというものの象徴がこの法案だと思います。

 それが何を生むかということをさっき私は具体的事例に即して申し上げたつもりです、それは、家族的な共同体を含む地域社会を破壊してしまう、そういう問題をはらんでいますよと、これは軍事的な問題とは若干離れますけれども。

 そういう社会の破壊を前提として、安全保障というのが成立するのでしょうか。安全保障という場合に、それは国家という抽象的な存在を前提にするのか、人間を前提にするのか、社会に住んでいる一人一人の人間を前提にするのか。

 そこを根幹にして考えていくときに、私は、むしろ、基地のない社会を一挙に実現できるとは言っていません。段階的にそういう方向性を探っていくことの方がよほど現実的であると私は考えていますので、こういう二者択一では問題は解決しないんだということを特に強調させていただきたいと思います。

○遠藤(乙)委員 私も二者択一だけとは言っているつもりはないんですけれども、当面のテーマとして、二者択一なら選択するしかないということで申し上げたので、その辺はよろしいかと思います。

 以上、私の質問を終わります。ありがとうございました。


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