平成十六年五月十九日(水曜日)
午前十一時開議

○遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。
有事法制に入る前に、一点だけお聞きしたいと思っております。総理の再訪朝に関してでございます。
来る二十二日、総理の再度の北朝鮮訪問が決まったわけでございますけれども、これには国民並びに国際社会から大きな期待もかかっているわけでございます。今回につきましては、拉致の問題と核の問題、この二点が特に重要なポイントでありますけれども、どこまで進展が見られるのか。
拉致については、既に帰られた五人の方々の御家族の帰国、さらには北側から死亡と言われている八名を含む十名の行方不明の方々、さらには新たな拉致の疑惑のかかる百人に及ぶ方々、これらの方々の安否についてどこまで真相の解明ができるか、また、その道筋がつけられるかということが大きな焦点であると承知をしております。
また、核については、いわゆる完全な、そして検証可能な、後戻りのできない核の放棄という、非常に難しいテーマであるかもしれませんけれども、どこまでその軌道に対して、北朝鮮を対話の中に引き込んで進展を見るかということが大きなテーマであります。
この二点につきまして、今回の総理の訪朝でどこまで進展が見られるかという見通し並びに総理の御決意について承りたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 今週の土曜日、二十二日に北朝鮮を訪問して、金正日氏と会談する予定になっておりますが、その中身につきましては、今いろいろ報道機関等で言われておりますが、私自身の考えとしては、一昨年の九月十七日に行われました会談によって日朝平壌宣言が発出されました、その日朝平壌宣言は現在でも極めて重要な文書である、この日朝平壌宣言に盛られたことを誠実に履行することが両国にとって最も大事なことなんだということを再確認し、お互い誠実にこの日朝平壌宣言を履行していこうという会談を行ってきたいと思っております。
御指摘の拉致の問題、核の問題、特に核の問題につきましては、六者協議で作業も行われ、会合も行われ、日本のみならず各国が大きな関心を寄せ、また朝鮮半島、アジア地域全体の安全に深くかかわる問題であります。
同時に、拉致の問題につきましては、これは日朝間の問題であります。既に帰国された方々、一日も早く残された御家族の方と一緒に過ごしたいという強い希望を持っておられます。そういう点を踏まえまして、私は、拉致の問題、核の問題、日朝平壌宣言を誠実に履行するという総合的、大局的な見地に立って、一日も早く日朝間の正常化に向けた道筋をつけたいということで、今回、再度訪朝することを決意したわけでございます。
もとより、御指摘の点も踏まえて交渉に臨みますが、どういう進展があるか、どういう内容であるかという点については、今の時点においては、私の口からこうだああだと言うことは差し控えたいと思っております。
○遠藤(乙)委員 ぜひ国民の期待、そして国際社会の期待を踏まえ最大限の御尽力をしていただくことを心より期待を申し上げる次第であります。
続いて、有事法制の関連でございますが、現在、国民保護法制等の十案件を審議いたしておりますけれども、前国会で通った武力攻撃事態法、これを含め、やっと我が国としても有事法制の体系が完成しつつあるということになるかと思います。
本来、有事法制というのは、法治国家である以上、有事の際に超法規的な措置をとることなく、基本的人権を守りながら国民の生命財産をしっかり守るために民主的手続を経て決める、当然のことでありまして、また、それをやることによって抑止力を高める、ある意味では自明のことではないかと思います。
それで、なぜ今この有事法制なのかということが世上言われておりますけれども、私の場合には、むしろなぜ今までおくれたのかということが逆に検証すべきことではないかと思っております。第二次大戦後、来年で六十年になるわけでありまして、このような長い間有事法制が十分議論されることなく、やっと今日に至ってこれが日の目を見るに至った。非常に喜ばしいことでありますが、なぜ小泉政権を待たなければならなかったのかということを、改めて総理の御所見を含めお聞きしたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 物事を判断する場合において、やはり時代認識というものがあると思います。ある時点では必要ないと思っていたことでも、時代が変わりますと、おのずから違う考えも出てくると思います。
そういうことを考えますと、特に日本は、第二次世界大戦で過酷な戦争という悲惨な経験を持っている、もう二度と戦争を起こしてはいけないという強い気持ちを持っておりまして、これは今でも変わらないと思いますが、同時に、日本自身が善意で悪いことをしなければ他国もそれを理解してくれるだろうという極めてナイーブな感覚が一部で根強くあったと思います。
しかし、昨今、テロ事件を見ても、自分たちの目的を達成するためには、全く関係のない市民を巻き込んで犠牲にしても何ら恥じることがないという事態が世界各地で起こっております。同時に、日本国内におきましても、必ずしも一般市民の善意を理解してくれる人ばかりではない、話せばわかるという人だけではない、話してもわからない人がたくさんいるということについては、大方の国民が気づいている、口に出さなくても感じていると思います。
そういうことを考えますと、やはり日本国におきましても、常に、日本国内を混乱させてやろう、あるいは日本国民に不安を与えてやろうという勢力がいるということは、今までの各事件を見れば大方の国民は理解しているのではないか。やはり、そういう一般市民の善意を理解しないグループ、そして一般市民を犠牲にしても平然として恥じることのないそういう勢力に対して不断の対応をしておかなきゃならない、こういう観念が最近とみに強まってきたと思います。
そういうことから、今回の緊急事態、有事に対しても、これは政党で対立する問題じゃない、政党に属していようが属していまいが、一朝事があった場合に、お互い国民として、自分の安全のみならず同胞の安全を確保するためにはどういう対応をすればいいかということが共通の認識として、過去に比べれば高まってきたのが現在だと思います。
そういうことから、今回、党派を超えて、この緊急事態に対して、やはり、意見の違いは違いであったとしても、有事に対応する措置というものは平時に考えておくのが政治ではないか。一朝事があったときにどうしようかと考えるのじゃなくて、やはり治にいて乱を忘れずという、昔から古今東西の鉄則、政治の要諦と言われていた、乱が起こってから考えるのではない、治にいて、平和のときに乱を忘れない、混乱が起こったときを考えるという極めて自然な感情が政党間でも定着してきたと私は思うのであります。
そういう点から、まだ乱が起こる前に、平時のときから乱に備えていこうという古今の鉄則がようやく日本においても理解されてきたなということが、今回のいわゆる与野党合意、やはりいろいろな法整備を整えておかなきゃならないという認識になってきたからこそ、このような議論が盛り上がってきたんだと思います。
そういう点については、お互い協力すべきところは協力する、党派を超えて、国民の安全保障、国民の保護をどうすべきかという点については、胸襟を開いて今後ともしっかりとした議論をし、しっかりとした体制を整えていかなきゃならないと思っております。
○遠藤(乙)委員 質疑時間が終了いたしましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。
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