第159回国会 武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会 第8号


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平成十六年四月二十三日(金曜日)
午前十時三分開議



○遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 きょうは四人の参考人の先生方、大変貴重な御意見を開陳いただきまして、心より感謝申し上げます。

 御承知のとおり、自民、公明、民主、三党におきまして、緊急事態基本法制を整備しようということで合意をいたしております。きょう、三人の先生方はそれにつきまして賛成意見というふうに承知いたしますが、ぜひ基本的なことにつきまして御意見を伺いたいと思っております。

 既に、緊急事態の定義並びに類型については、今の北村委員の質問に答える形でお話がありましたもので、これはもう省略をしたいと思います。

 一点だけ、類型の中で、いろいろ含めていかなければならないと思っておりますが、例えば石油危機のような事態、あるいはまた北欧の一部の国では食糧危機なんかもこういった緊急事態に含めていると思いますけれども、日本の場合、こういったものを含めるべきかどうかということなんです。この点につきまして、三人の先生方にお聞きしたいと思います。

○青山参考人 これは多分異存の少ないところではないかと思いますけれども、我が国においては、エネルギー、食糧、いずれも自給率が低いないしは自給が難しい状況でありますから、当然、テロだけではなくて、今後の新しい危機のあり方として、例えば、日本への食糧の流れ、エネルギーの流れをとめることもあり得るわけです。ですから、当然、私は基本法の中にはその考え方は含めるべきだと考えております。

○小川参考人 重要な御質問、どうもありがとうございました。

 私も、石油の問題あるいは食糧の問題等はすべてこの緊急事態の中に含めて克服できるような体制を組むべきだと思っております。

 例えば、エネルギーの問題一つとりましても、日本は中東にエネルギーの九割以上を依存しているということをどこへ行っても言う。そのくせに、中東のエキスパートをどれぐらい育ててきたのか、いないじゃないかという感じがするぐらい手薄なんですよ、一部優秀な先生方はいらっしゃるけれども。外務省に聞きましても、きょうも午後に行くのですが、本当に流暢なアラビア語の通訳をできる人間は何人いるんだと言ったら、三人おりましたと言うんですね。過去形とは何だと言ったら、一人死にましたと言う。これで、中東で、アラビストかという感じですよ。

 これはやはり、外務省が悪いんじゃなくて、我々が中東の重要性というのを国家の緊急事態という格好でとらえていくという発想がなかった結果でございます。

 ですから、当然ながら、御質問にありましたような分は全部含めていきたい、そう思っております。ありがとうございました。

○小尾参考人 結論から言いますと、私もお二人の意見と同じであります。総合安全保障という視点で考えているということです。

 特にエネルギーに関しては、日本は石油一〇〇%を海外依存で、それも中東ということで、一九七〇年代に第一次石油危機、大変な国民的パニック、それから経済危機があったわけですし、また、食糧に関しても、以前、大豆の輸入ができなくて、あるいはお米の不足の問題があって、国民的な経済的損失も非常に大きかったということを考えまして、総合的な視点で危機を考えるというふうに考えております。

○遠藤(乙)委員 大変ありがとうございました。

 この質問をしたのは、今後、緊急事態法制を整備していくに当たり、国民に御理解をいただくためには、何が緊急事態かという明確なコンセプト、これをしっかりと定義をすること、それからさらに、抽象的な定義だけにとどまらず、具体的な類型を示して、ビビッドに国民の方々に必要性を理解していただく、そういった意味で御質問したわけでありまして、ぜひとも今後ともさらにまた御指導を賜れればと思っているところでございます。

 続いて、第二点なんですが、なぜ今緊急事態基本法なのかという、これも国民に対して説明責任が重要な点でございます。

 確かに、今までもずっとこういった危機管理のことは叫ばれてきましたが、今ここに来て、二十一世紀初頭に当たって、なぜ今これから取り組まなきゃならないかということを国民の皆様によく理解をしていただく必要があると思っておりますが、そういった意味では、さまざま新しい要素、新しい環境、新しい状況に入ったということも一応きちっと強調しなければならないと思っております。

 例えば、私なんか個人的に見ると、冷戦が終了して、逆に地域紛争や非対称型の紛争がふえてきた。特にテロの蔓延という大きな事態がある。さらにもう一つは、手段の面で、新しい、大量破壊兵器の拡散ということであり、NBC、核や生物あるいは化学兵器、鳥インフルエンザなんかも生物兵器と類似していますので、いろいろな形で新しい手段、形態がふえてきている。さらにまた、ネットワークスキャンというような、文明社会という新たな脆弱性が逆に突出してきて、そこをねらえば社会が麻痺するといった事態もふえている。

 こういった環境の変化、時代の変化に応じて、ぜひともこういった緊急事態対処は確立しなければならないということは必要だと思っておりますけれども、そういった点について、なぜ今緊急事態法制なのか、この点につきましてやはりお三人の御意見を伺いたいと思います。

○青山参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 重大テロという新しい脅威につきましては、国民の関心も一番高くて、今、遠藤先生からも御指摘ありましたので、私から繰り返す必要は余りないと思うんですね。

 先生のお言葉の中でとても大事なキーワードがありまして、全く新しい事態、新しい時代になったと。それを主権者に理解していただくために、二点申し上げたいんです。

 一点は、先ほどの話と実は関連する、あるいは百八十度違う面もあるんですけれども、今までは、日本に資源が全くなくて、日本が中東を初めとする遠くの地域にエネルギーをとりに行ったときにそれが阻害されるという想定だけだったわけですけれども、実は今現在、中国の海洋探査船が、日本に事前通告なく、繰り返し参っていることでも推察できますように、日本の近海には実はメタンハイドレートという、天然ガスよりも効率がよく、さらには埋蔵量も非常に多いものが、既に日本の近海、南海トラフだけではなくて、日本の領海内、EEZ、排他的経済水域も含めて、多量に埋蔵されていることが既にほとんど確認されているわけであります。

 そうしますと、私自身も子供のころから、日本は資源がない国だということだけ教わってきたわけでありますけれども、実は、日本のエネルギーが奪われる、ないし襲われる事態もあり得る。特に、中国においては、人口爆発が続いていて、エネルギーが足りなくなっているわけでありますから、それぐらいのコペルニクス的転回のような時代の変化が起きていることが一点。

 それから、在日米軍の役割について、在日米軍が実際に果たしている機能について主権者としてよく知る必要があると思いますのは、例えば、三沢のF16、嘉手納のF15の近年の主要な任務といいますのは、イラク戦争前のイラクの飛行禁止区域の南部のところに飛来してそこを攻撃するということも行っていたわけであります。

 したがって、在日米軍は、この北東アジアの周辺の安全に寄与するだけじゃなくて、世界全体を見ているわけです。例えば、イラク戦争が始まりまして、今のような状況になりましたら、沖縄にいます海兵の四個大隊のうち三個までが出払っている。そうしますと、世界展開している米軍と日本の関係ということをもう一度主権者として考え直さねばならない。アメリカの世界戦略との絡みで、日本の防衛協力をどうなすかということをもう一度考えるべきである。

 今までの常識が、エネルギーについてもアメリカとの関係についてもすべて通用しなくなっているということを主権者に理解していただくのが、まずこの基本法の策定には必要かと考えております。

 ありがとうございました。

○小川参考人 なぜ今かという話でございますが、遠藤先生が総理大臣であれば、今までなかったのがおかしいから今だと多分答えられるでしょうね。

 つまり、これは状況が変わったからということではなくて、本来国家が国民に対して負わなければいけない責務の中で、やはり安全というのは一番大きいわけですよ。それにとって、やはりこういったものがなければおかしいというのに、なかった、だから私が政権をとったからやるんです、あるいは、我々が国会を動かしている中で実現したんです、これは野党であろうと与党であろうと同じであります。そういった考え方で国民に説明をしていくというのが恐らく正攻法ではないか。

 ただ、その場合、国民の理解を得やすいということでいいますと、戦争というのはイメージがわかないんですよ。というのは、まず、自衛隊、ほとんど行ったことないでしょう、武器をさわったことないでしょう。だから、カタログデータ的な話をする人はいるけれども、実際にわいているイメージというのは幼稚園のレベルなんですよ。だから、これはアメリカあたりでイメージされているものとこんなに差があるわけです。そこで理解してくれといったって、無理なんですよ。

 だから、さっき、応用問題、基礎問題と言いましたけれども、同じ税金を使って国民の生命財産を守るといっても、やはり、防災能力を高めようとか、そういった面であれば反対する人は基本的にいない話で実現しやすい、そこから入っていこう。だから、大規模災害あるいは大規模事故、そこから入っていきながら、今我々を取り巻く環境の中で、非常に国民がニュースに接して危機感を持っている大規模テロなどに入っていく。そういった形で順序を踏んでその理解の度を上げていけば、本当に高度な応用問題であると言って差し支えない国防の問題についても、健全な議論とそれを支える理解が生まれてくるんじゃないかと思っております。

 どうもありがとうございました。

○小尾参考人 遠藤先生の質問の中に、もう既に答えが十分入っておりました。あえて申し上げれば、国内的に、国民の不安というのは、治安が非常に悪化してきたとか、あしたにでもテロがあるんじゃないかとか、そういうような国民に対する国家の責任というのはあるでしょう。それから、対外的に、二人の参考人が言ったような状況変化。また、特に私、気になっているのは、やはり日米関係、日米安保条約の中での位置づけが変わってきたのかな、日本に対する大きな責務というのが出てきたのかなと。それには、日本国民が十分理解できる基本法がこの時期にはぜひとも必要、そういう時代の流れというのがあると思っております。

○遠藤(乙)委員 それでは、次の質問に入ります。

 日本はなぜこういう危機管理体制が弱いのか。先ほど小川先生からも御指摘があったように、非常に縦割り型、分権的な意思決定といいますか、あるいはボトムアップの意思決定、こういう長い、風土に根差した、あるいは歴史的、地政学的環境に根差した意思決定過程が根本にあって、非常にそれが根深い問題だというふうに感じております。

 そういった中で、有効な危機対処のための意思決定過程をつくっていくためにどうしたらいいかということなんですが、一つは、機構型、FEMAのようなかなり権限を集中した包括的な機構をしっかりつくっていくのか。あるいはまた、今の日本がやっています、内閣危機管理監を中心にネットワークを広げて、そのネットワークをしっかりとつくり上げていく、こういった、ネットワーク型と言ってもいいような形があるかもしれませんが、この二つの類型に即して、当然、行政改革という要請もあるわけですけれども、日本型の有効な意思決定過程、特に危機管理に対する意思決定過程にするにはどうしたらいいのか。ずばりひとつお聞かせいただきたいと思っております。

○青山参考人 三問目はなかなかに難しい御質問だと思うんですけれども、先生御指摘のように、私たちの祖国というのは、二千年の歴史の中で、気がついたら税金を納めていましたし、気がついたら天皇陛下もいらっしゃった。私は、天皇制をこの国の安定の基本として高く評価していますけれども、いずれの制度も、私たちが自覚的につくったものではない。反面、アメリカは、二百三十年の歴史しかありませんから、納税制度も、それから大統領制も、全部手づくりの国であります。ですから、さっき申しましたように、アメリカの制度は、FEMAにしても、そのまま援用することはできないと考えているわけであります。

 先生がおっしゃった、あるいは私も共通認識を持っている、日本の特有の構造を持ちながら危機というものに有効に対処するためには、まず責任を一点に絞ることが肝要であろうと思っております。

 さっき申しました、行政権がどこに属するかということもそうですけれども、私たちは、戦前の歴史をかんがみますときに、天皇陛下は統帥権をお持ちでしたけれども、しかし、帝国陸軍、海軍の指揮権は実は持っていなかった。あれだけの大戦争が起きながら、直接の最終責任者はだれであるかということは、ついに明治憲法下においてあいまいであったと私は考えております。そういう意味では、もちろん天皇陛下に戦争責任はなかったと私は考えておりますけれども、もともと責任の所在が明確にされていなかった。

 そうしますと、さっき先生の方から、機構型、ネットワーク型というお話がありましたけれども、ネットワーク型になるためには、まず責任の所在が一点に絞られた機構があって、そこから横にネットワークを広げていくものでありますから、まず、私たちの国においては、機構をはっきりさせ、責任をただ一点に絞る、ただ一個人に最終的には帰結させるというシステムをつくることが先決であろうかと考えております。

 ありがとうございました。

○小川参考人 私自身が若干かかわったことでお話しできることを通じて、お答えしたいと思います。

 私は、小渕内閣のとき、野中官房長官といろいろな仕事をさせていただきましたが、あの中で、やはり政治とはこう機能しなければならないんだなということを改めて思ったのは、ドクターヘリの実現なんです。

 先ほどもちょっとお話ししましたように、お医者さんがヘリコプターに乗って事故現場まで飛んでいって治療をする、これは大変救命効果が高い。一九七〇年に西ドイツがスタートさせた。先進国は当たり前の状態になっている。日本もそれをやらなきゃいけないというので、一九七五年以降、お医者さんが声をかけて、国に四回、委員会をつくった。でも、六つの役所プラス道路公団とか何かが絡んできて、どこかが反対するから、全部空中分解。その間に国民はどんどんどんどん死んでいって、警察の統計の範囲内の交通事故の死者は三十万人を超えちゃった。その半分は助かる。統計の後、死んでいる人は五十万人。その半分は助かる命。

 私は、九八年の秋に野中さんとしゃべっていて、こんな救える命で、前例も実績もあるようなことをできない日本が先進国なのか、民主主義国なのか、人道とか人権とか人命とか言える国かと言ったら、野中さんは、縦割りにならないようにと内閣内政審議室に委員会をつくってしまった。だから、大規模にはまだ進んでいないけれども、そこでいっちゃうんですよ。

 だから、私が申し上げたいのは、危機管理においては特に政治が、どの段階であれ、みずからがどう機能しなければいけないかということを自覚してきちんとやっていくということがまず大事であろう。それから、世界のレベルはどこかということを常に意識して、そこに到達することをやはり常に目指し歩いていく形にすべきであろう。

 そこにおいては、日本の官僚機構に幻想を持ってはいけないということなんです。優秀な人が集まっていて、確かにすぐれた人はおりますけれども、私は、九〇年以降、上級職の国家公務員の研修をやっていますけれども、すぐれた人間を集めてきて、だめにしちゃうシステムなんです。だから、局長、審議官クラスになると、かなりな部分が世界に出すと通用しないんですよ。それを言っても、自分のことじゃないと思っている人も随分いますね。

 だから、やはり彼らを機能させるためには、政治がみずからの責任と職務というのを自覚して、その組織の頂点で号令をかけていく、動かしていくということが大事だろうと思っております。

 ありがとうございました。

○自見委員長 小尾参考人、質疑時間が終わっていますので、恐縮でございますが、簡潔に。

○小尾参考人 国内的には、行政改革ということで、重複がないようにするということで、機構型をどういうふうにしていくかということですね。それからもう一つ、地方分権ということとの絡みで、ネットワークでいいかどうかということ。それから、武力攻撃のような非常にグローバルな場合には、やっぱり日本に一つの中心点があった方がいいというふうに考えております。

○遠藤(乙)委員 大変示唆に富む貴重な御意見、ありがとうございました。

 以上で終わります。


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