第158回国会 財政金融委員会 第3号 

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平成十六年一月十四日(水曜日)
午後一時開議

○遠藤(乙)委員 遠藤乙彦でございます。
 日向野また上野両参考人は、大変お忙しい中御出席をいただきまして、ありがとうございます。

 今回の足銀破綻処理の問題は、地元の栃木県を中心に甚大な被害をもたらすとともに、また、今後の我が国の金融システムのあり方、特に地銀のあり方について大変重大な影響を及ぼす問題であると認識をいたしておりまして、ぜひ両参考人には率直な御意見の表明をお願いしたいと思っております。

 特に、足銀についてはやはり何といっても経営責任の問題、それから、監査法人については監査の信頼性という問題、この二つが大きな焦点であると思っております。

 既に足銀の経営責任の問題につきましては船田委員の方から十分に質問され、お答えがあったと思いますので、重複を避けていきたいと思っておりますが、日向野参考人の場合には大変ある意味では同情すべき立場にあると私は思っておりまして、過去の膨大な不良債権、いわば負の遺産を背負った中で頭取に就任をされて、結果的に敗軍の将になってしまったということで、大変お気の毒な立場であると私は個人的には同情を禁ぜざるを得ません。

 しかし、足銀の問題を振り返ると、一番大きな背景には、バブル期以降の融資拡大路線、リスクの要因を十分に考慮しないままやみくもに融資拡大に走った、それが何といっても最大の背景にあると思っております。先ほど御答弁がありましたけれども、この点について、過去の経営陣の責任、特にやみくもな融資拡大路線について、日向野参考人個人としてどういったお考えをお持ちか、改めてお聞きしたいと思います。

○日向野参考人 先ほどもお話を差し上げましたが、過去の責任問題ということにつきましては、それぞれの人がそれぞれの時期にそれぞれ自分で考えて、ベストだと思う方法で走ったのではないか、かように思います。その結果、過剰な部分も中には出てきたかもしれませんし、やらなければ他行に追い抜かれる、こういうような部分も出てきたでしょうし、いずれにしろ、過去の責任につきましては、新しい経営陣のもと、調査委員会ができるようでございますので、それに任せてみたいと思います。

○遠藤(乙)委員 続いて、監査法人、上野参考人に御質問いたします。

 三月期の決算について、中央青山監査法人は、監査の結論として、四・五四%の自己資本、そして適正であるという結論を出されております。これに対して、金融庁のその後行った検査は、二百三十三億円の債務超過という結論に達しております。同じ一つの三月期の決算というものに対して、いわば合格と不合格と、大きな違いがあるわけでありまして、これは一体何なのかというのが素朴な疑問でございます。

 特に、監査法人の適正という意見については、その後、地元でも多くの方が、そういったお墨つきを信頼して株を購入した人もたくさんいるわけでありますから、こういった問題に対しても大変大きな責任があるのではないかと私は思っております。

 そもそも、この三月期決算に対する監査法人の適正という結論と、それから金融庁の二百三十三億円の債務超過という、非常に大きな隔たりのある見方は一体どういうことなのか、監査法人の方にお聞きしたいと思います。

○上野参考人 監査と検査の違いは、この制度、それから目的というものが、全く基盤が異なっているというふうに思います。

 監査は、公認会計士または監査法人が、銀行との契約に基づいて、銀行の財務諸表の適正性に関して意見を表明するということを目的として行っております。対して、金融庁の検査は、当局が、銀行法に基づき、金融システムの安定化という見地から、金融機関の業務の健全性を確保するために行うものであるというふうに認識しております。

 また、監査は、決算確定前の段階で、法定期限内に行われるのに対して、検査は、通常、決算が確定後相当期間を経過した後で事後チェック方式で行われるため、判断する時点が異なっております。そして、この当局の事後検査の結果は、前決算期に遡及して決算を修正するというものではなく、銀行みずからが次の決算ないし中間決算にこれを反映させまして、それを再び監査人が監査する、こういう枠組みで検査制度と監査というものが仕組みとして成り立っているというふうに思います。

 当法人は、当行の十五年三月期の決算は会計基準に準拠して適正になされており、当法人の監査も適正に行われているというふうに考えておりまして、その監査の結果認められた財務諸表について金融庁が検査されて、御指摘のような検査結果を発表した、こういうふうに理解をしております。

○遠藤(乙)委員 続きまして、九月期の決算につきましては、先ほど日向野参考人からは、ぎりぎりまで監査チームが派遣されていて、自己資本比率〇・九%、それで繰り延べ税金資産は千二百八億円ということで了解をしていたというお話、説明がありました。

 もしそういった検査が反映されるのであれば、当然このチームの監査の中でそういった意見が表明されるべきであり、注意喚起がされるべきであって、そういったことは足銀側に対して行われたんでしょうか。日向野参考人。

○日向野参考人 中央青山監査法人のチームが十人ばかり来ておりまして、そのときは、二カ月、九月の下旬以来十一月二十六日まで、検査結果、金融庁の検査についてのアドバイスと、それから税効果、それからいろいろな決算を処理することで打ち合わせを続けてまいりました。

 税効果につきましては、繰り延べ税金資産につきましては、二十六日の朝まで、審議会にかけるための資料の提出を続けていたわけでございます。審議会は何回か行われていたと聞いておりますが、そのたびに千二百八億の裏づけ資料を送って、お互い確認をし合っていたわけでございます。その間、一切繰り延べ税金資産を認めないとか、一%だから低いからだめだとか、そういう話は一切ございませんでした。

○遠藤(乙)委員 監査チームといっても、監査法人の意図、意向は当然代表しているはずであって、全く関係ないわけではない。当然、監査法人の基本的な方針、意向というものは持って監査に当たっているというのが常識的な理解だと思いますけれども、今の日向野参考人のお話を伺いますと、どうもそういうことはなかったように思われますけれども、それは、今の両方から伺った説明とはちょっと食い違うのではないかと思っております。

 この点につきまして、監査法人の内部における審議会とそれからチームの意見、あるいは意思疎通はどういうふうに行われていたのか、その間で、そういう繰り延べ税資産の扱いについてどういう議論があったのか、御説明いただきたいと思います。これは上野参考人にお願いします。

○上野参考人 監査法人の意見の形成のプロセスについて申し上げます。

 私ども、代表社員が大体二百五十人少しいる組織でございまして、その者たちが各監査契約ごとに、それぞれの関与する会社の監査を実施しております。しかしながら、監査意見の表明に当たっては、非常に重大な大きな事項、あるいはこの判断に対して関与社員だけでは判断が難しいというような事項については、必ず審議会にかけて、そこで議論をするということをやっております。

 したがいまして、今回のケースにおいては、先ほど来申し上げましたように、かねてから繰り延べ税金資産については重要な審議事項になっておりまして、私どもの足銀に対する、足利銀行に対する監査チームは、この計上が今回できるかどうかについては最終的に審議会の決定事項ですよということはかねてから言い続けておりましたことは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 また、中間決算そのものを最後に私どもが手元に受け取りましたのは十一月の二十六日でございまして、十一月の二十六日に中間の決算案を受け取って、そこで我々は直ちに審議会を開催して、この結果をお知らせした、こういう経緯を経ておることを御理解いただきたいと思います。

○遠藤(乙)委員 そうしますと、監査チームとそれから監査法人の審査会とでは大きなギャップがあったのかなというふうに感じます。

 今の御説明では、当然、監査チームの方にはそういった方針は徹底されているというふうに了解しておりますけれども、銀行側に対しては、この九月期の中間決算の監査の過程において、繰り延べ税金資産について疑義がある、問題がある、大きな検討課題だということは、監査チームから説明があったんでしょうか。日向野参考人。

○日向野参考人 この問題につきましては、先ほども申しましたとおり、我々としては、ゴーイングコンサーンがなされるものだというふうに感じておりました。

 なぜならば、これは、収益の可能性、収益がだんだん上がってきているということが業務純益の形を見てもわかっておりますし、リストラの効果も出ているということも数字でわかってきております。収益、たまたま十五年三月期は株価の償却で赤字を出しましたが、業務純益はずっと右肩上がりになってきておりましたし、それからリストラも順調に進んでおりました。

 こういうような過程において、なおかつ、三月期に千三百八十七億円計上していた繰り延べ税金資産を九月期には千二百八億円というふうに、業績が上がっているにもかかわらず下げようと努力をした、こういうことは、我々の方に来ていました代表社員を含めた関与社員、それから応援のスタッフ、監査チームの方々と十分話し合って、これでいこうということでございます。この間、一%未満になる、こういうようなことも監査法人は十分知っておりましたし、二十一日以降は正確な数字がほとんど固まっておりました。そこで債務超過ではないという形を我々も確認して、二十七日に突然ああいう申し出になったわけでございます。

 これは、契約に基づくいわゆる信頼性の原理といいますか、告知のこととか我々に対する説明義務とか、いろいろな問題が我々は残っているんじゃないかというふうにちょっと悔しい思いをしております。

○遠藤(乙)委員 今の両者のお話を伺いますと、やはり現場のチームと監査審議会との間に大きな意思疎通の欠如があったというふうに思わざるを得ない節があるかと思います。いずれまたこの問題は調査をしていきたいと思っております。

 もう一点、実は、金融庁の三月期検査におきましても繰り延べ税金資産は認められているわけです、九百五十五億円ですか。ということで、たしか金融庁の三月期検査においても繰り延べ税金資産の編入は認められているというふうに理解をいたしておりますが、それを九月期の決算において監査法人が全面否定したということになります。これは重大な路線の転換である、あるいは監査のやり方の転換であると私は感じております。

 それで、監査チーム限りでの判断では、〇・九%、千二百八億円の繰り延べ資産ということで、これは何とかパスするという判断だったというふうに理解をしておりますが、まさに、この自己資本比率〇%をめぐって、ほんのちょっと前後するだけで、別な方式か今回の第三号方式かという大きな違いが出た。特に、銀行にとっては破綻処理というのは死刑宣告に等しいものであって、片や生存に向けて処理がされた、片や死刑宣告だということで、ほんのちょっとの違いをめぐって大変重大な決断を監査法人に与えているということになるわけであって、このシステム自体がいろいろ問題があり得るのではないか、もう少し政治的な判断が、総合的な政治的判断を加える余地が必要ではないかということは前回の委員会でも私は議論したところでございます。

 ところで、今、この審査会が繰り延べ税金資産を全面否定するに至った理由について三つ挙げられたわけでありますけれども、では、その基準は確立された基準なんですか。既にそういった三つの基準が挙げられておりますけれども、これはだれが決めたのかということ、それはまたいわば確立された基準であるのかどうか、この点、監査法人にお聞きしたいと思います。

○上野参考人 先ほど申し上げた三つの基準は、我々は、具体的には会計士協会が定めております監査委員会報告六十六号という基準に従って判断をさせていただきました。

○遠藤(乙)委員 そうしますと、今後地銀に対しては大変厳しい影響が出るというふうに考えます。本来地銀は、よく言われるリレーションシップバンキングのことで、地元企業と非常に密接な関係を結んでいろいろな事情を考慮しなければならないわけでありまして、それに対して非常に厳しい基準を一律に適用するということは、日本の金融システム、特に地銀に対しては大変厳しい状況をもたらすことになるわけであります。この点は、今後政策的な視点から検討をすべき必要が非常にあると私は感じております。

 もう一点、この具体的な判断に至ったところについて聞きたいんですけれども、先ほど足銀の日向野参考人からは、経営が改善しつつあった、特に三月期から九月期にかけて経営が努力によって改善しつつあって、利益も上昇傾向を示しているという御説明がありました。それに対して、監査法人の方は、利益は実現できないというふうに判断をしたとされておりますけれども、この判断は余りにも予断ではないか、厳し過ぎるのではないかという印象を持ちますけれども、この点はいかがなんでしょうか。

○上野参考人 繰り延べ税金資産の回収可能性というものを判断する場合には、単に業務純益だけで判断しておりません。業務純益の確実な達成ということはもちろん非常に大事なのでございますが、最終的に重要なのは将来の課税所得の見込み額でありまして、それは業務純益と同様、償却、引き当てに関する見込みの確実性というものが見込まれなければならないわけでございます。この将来課税所得の見込みが重要であるということについては、先ほども申し上げましたとおり、経営者確認書において前三月期の決算で、私どもは御理解をいただいているというふうに考えております。

 そしてまた、当行の場合、確かに業務純益については改善の方向にありましたけれども、九月に見直された経営健全化計画、これで計画していた課税所得について、既に償却、引き当てに対して相当大きな乖離があり、この将来の課税所得というものの合理的な見積もりに重要な疑義があるというのが私どものこの利益計画に対する評価でありました。

○遠藤(乙)委員 今の上野参考人の御説明に対して日向野参考人はどういう見解を持っておられますか。

○日向野参考人 先ほど来御説明差し上げましたとおり、一番大きいポイントは、これを返せるかどうかということになります。それはやはり、課税所得、そして実質業務純益によるものではないか、かように思っております。

 先ほど来申しましたとおり、十四年九月の実質業務純益は二百五十二億、それから十五年九月が二百七十二億、こういうように、確実に上がる体質になっております。そして、その上がる体質を確保するために、さまざまな手段を打ったり、地元のためになる企業活性チームをつくったり、温泉場活性チームをつくったり、いろいろなさまざまな手段を講じてきたわけでございます。そして、これが確実にいくかどうかというのはゴーイングコンサーンの大きなポイントとなるという監査法人の指導もありまして、我々は毎月監査法人に、月次の収益がきちんと上がっているんだということを説明を続けてまいりました。

 それにもかかわらず、途中の段階での説明義務は果たせずに、二十七日になって突然言われたわけでございます。

○遠藤(乙)委員 双方の御意見を伺うに従って、やはりこの百二条三号処理の問題がむしろ浮き彫りになってきたと私は思っております。前回の委員会でも、法律あって政治なしということを申し上げたわけですけれども、単純な機械的な基準あるいは監査の基準だけでこういった重大な決断をするにはやはり問題がある。そこにどうしても地域の実情や今後のシステムのあり方も含めた政治的判断を加える余地が必要であって、やはりソフトランディングをしっかりやることによって日本経済を最小限の犠牲で立て直すという課題を実現していく必要があるかと思っております。

 時間が十分ありませんでしたけれども、そういった課題が逆に浮き彫りになったというふうに私は受けとめまして、御両人の率直な意見表明に謝意を表しますとともに、ぜひとも今後の審議をまた進めていきたいと思っております。

 以上です。ありがとうございました。


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