第158回国会 財政金融委員会 第2号 

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平成十五年十二月四日(木曜日)
午前十時開議

○遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。
 私は、今、公明党栃木県本部の代表という立場にもございまして、今回の問題に関連をいたしまして、地域の多くの方々と対話をしてまいりました。そういった地域の気持ち、希望等も含めまして、ぜひ質問をさせていただきたいと思います。

 一言で言って、今の栃木県は、今回の措置に対して大変な怒りとまた恨み、あるいはまた不安が渦巻いておりまして、ある人の言葉をかりれば、突然栃木県に原爆が落とされたような思いだ、そこまで言っている人もいるわけであります。また、大変血も涙もないやり方であって、地域の実情を全く知らず、痛みだけを押しつける非常に厳しいやり方だ、そういった受けとめ方をしておりまして、ただでさえ地方経済の疲弊に基づき萎縮している中にあって、ますます心理的に萎縮している、そういった状況でありますので、ぜひ、まずそのことを大臣はよく知っていただきたいと思っているところであります。

 私は、まず質問の第一は、今回の措置を、いわば地銀の代表的な存在である足銀に対して、突然三号処理というハードランディングを強いたわけであります。本来であれば、もっともっといろいろの手を打って、できる限りソフトランディングさせるべきであり、また、やろうと思えばできたものを、なぜいきなりハードランディングという、非常に犠牲の大きい、死傷者を伴うような、そういう措置に出たかということが第一の問題点であると思います。

 特に今回の場合、システミックリスクが差し迫ってあるとはとても思えない状況だったと思いますし、また足利銀行の場合、業務純益が三月期決算、九月の中間決算ともに改善をしておりまして、経営の努力が着実に出始めているという状況であったわけであります。

 そしてまた、今回の措置を考えますと、費用対効果の点で、極めて費用が余りにも大きいんではないかというふうに感じております。

 直接的には、今回、株主の責任が問われるわけでありますけれども、地元的には、七百二十七億円の株を買っている。これは本当に善意の株主たちでありますし、これが全部紙くずになってしまう。このことの負の資産効果が非常に大きいということがまず言えるかと思います。何よりも心理的な衝撃によって、今まで萎縮していたのがさらに萎縮して、一層経済を落ち込ませる、こういった効果があるわけであります。

 また、今度の三号措置は、伝えられているところによりますと、一兆円に達する公的資金の投入が必要とされるということが議論されておりますが、「りそな」型のケースであれば三千億円ぐらいで済んだであろうということも言われておりまして、こういったことを総合的に勘案すると、極めて犠牲の大きいハードランディング措置であった。

 なぜこういった措置をとるに至ったのか、その政治的な判断の背景はどうだったのかということをまずお伺いしたいと思います。

○竹中国務大臣 遠藤委員の今の話を通して、改めて、やはり地域の方々の不安、御懸念、痛切に感じます。私たち自身も、もちろん、このような事態に至ったことはもう大変遺憾なことであるというふうに思っている次第でございます。

 ぜひとも基本的な点で御理解を賜りたいのは、委員おっしゃった一号措置の方がよかったのではないか等々、心情的に非常に御理解できるところがあるんですが、まず、日本の法律の枠組みとして、これは先ほども渡辺委員が御指摘になりましたように、そのような措置はとれない形になっているということでございます。

 これは、察するに、やはり金融というビジネス、銀行というビジネスは大変厳しいビジネスなんだということだと思います。債務超過になった、普通の企業でありましたら、債務超過の企業というのは世の中に結構たくさんございます。それでも、資金繰りがついている限りその企業は存続しているわけでありますけれども、預金者の大切な預金を預かって、それを運用する銀行としては、そういう状況で、債務超過になって払い戻しができない、払い戻しができないというようなことが懸念される状況になったら、これは存続し得ないという枠組みになっている。

 そういう意味から、実は銀行自身が、みずからが債務超過であって破綻を申請するという、銀行みずからの申請があった、申し出があったということでございます。

 我々、監督の立場からは、こうした場合に、委員、政治的な判断というふうにおっしゃいましたが、実は、そうしたことがあった場合の我々の判断というのは、まず百二条というのを適用すべきかどうかという判断になります。しかし、ここは、百二条をもしも適用しなかったら、これは結果的に預金者が負担をかぶるということでありますから、これはやはり避けなければいけない、地域のリスクをできるだけ小さくしなければいけない。そういう場合には、一号措置というのはやはり債務超過である以上はとれなくて、二号か三号かという判断になるわけでございます。この辺の、金融業の特殊性にかんがみた今日の仕組みについて、ぜひとも御理解を賜りたいと思います。

 さはさりながら、地域の不安が大きいということは、これは委員の御指摘のとおりであります。特に、今株主の方々がこうむった被害、そうしたことを踏まえて、地域の経済が萎縮しないような措置というのは、これは万全に、政府の責任においてしっかりととらなきゃいけないと思っております。

 既に御説明しましたように、金融危機対応会議を終えまして、そのすぐ後に関係省庁の連絡会議というのを、準備会を開いて、既に正式会合も開きました。そうした中で、とりわけ政策金融を活用した資金繰りの手当て等々を中心に、ないしは雇用の問題を中心に、連絡会議で、地域への影響を最小限に食いとめるような努力は最大限我々としてもしていく覚悟でおります。

○遠藤(乙)委員 今の大臣の御答弁は、債務超過ということがキーワードであり、また、ルール上そうであるからやむを得ないという御答弁だったわけですが、その考え方は、やはり地元のある人の言葉をかりますと、法律あって政治なし、総合判断がないのではないかと。本当の意味で、日本の地域をどうするか、そういった全体のビジョンや戦略に立った上での総合判断力が欠けていて、ルールだからルールだ、マニュアルだからマニュアルどおりやった、そういうことにしか見えないという、法律あって政治なし、これは非常に今の行政、政治のあり方をついた発言であると私は思っております。

 そこで、それはそれとして、今回、債務超過であるということが銀行自身から申請があったと言っていますけれども、実態は、監査法人がそういったことをいわば押し切ったわけでありまして、最後の最後まで銀行側と監査法人の間で激しいやりとりがあったと私たちは聞いております。十一月二十七日の午前十時になって、監査法人がもうそれ以外ないということで押し切ったというふうに聞いておるわけでありまして、いわば債務超過にさせられたということであると私たちは受けとめております。

 それも、いわゆる繰り延べ税金資産の扱いという、会計上のいわば解釈にかかわる問題ですね。それのさじかげんで、監査法人が従来の考え方を豹変させて今回なったというわけでありまして、私はこの点、非常に大きな疑念を持っているわけであります。こういった、繰り延べ資産をどうするかといった単なる会計上のテクニックの問題で、さじかげんで、大きな銀行の倒産を決めるという重大な決定をさせていいのか、一監査法人にそういったことを、生殺与奪の権を与えていいのかという根本的な疑問があるわけであります。

 また、この監査法人は三月期においては適正であると監査をしたわけでありまして、多くの人々はそれを信じて株を買った人もいるわけであって、それを信じて応援してきたわけであって、この期に及んで突然考え方を豹変させた。一つの見方によれば、来年の公認会計士法の改正、それによって金融庁の監督権限が強くなる、それを見越して、今回の問題で不評を得るよりも、先のことを考えて自己保全を図ったという見方すらあるわけでありまして、監査法人のそういう態度の豹変については、非常に信頼性の問題もある、また責任の問題もあると思っております。

 この点につきまして、大臣の見解はいかがでございましょうか。

○竹中国務大臣 企業はみずからが決算をつくる、その際に、監査法人の監査を受けなければいけない、そういう協議をしなければいけない、その場合、監査法人というのは、一般に公正妥当と認められる会計慣行に基づいて、職業会計人としてのきちっとした判断をしなければいけない、これが私たちの社会が持っている会計情報作成のための一つのインフラであろうかと思います。その過程で、これは当事者間の、あくまでも会社、この場合は銀行と監査法人の間の話し合いであります。どの監査法人を選ぶかということも、これは会社、銀行の選択の自由です。国が割り当てているわけではありません。

 そうした中で、今回、当事者間でいろいろなやりとりがあったということは、間接的には我々にもそういった話は聞こえてくるわけでありますが、このあたりのやりとりについては、これはもう当事者間の問題として、ともに責任ある立場の人たちでありますから、きちっと御判断をされるしかないのではないかと思っております。

 我々の理解では、いろいろなやりとりがあったのでありましょうが、最終的には銀行の判断で、債務超過である、そういうことを取締役会でも、決算の承認の会議で決めて、その上で銀行の判断で破綻の申し出をなしているというのが現状ではないかと思います。

 公正妥当な会計慣行、このものについてもいろいろな議論があろうかもしれませんが、現実問題としては、繰り延べ税金資産に関しても、公認会計士協会で作成された実務指針に基づいてそうした監査が行われているものというふうに承知をしております。

 監査法人は、会計士は、まさにいかなる利害からも、国からも独立した立場で、職業監査人、プロフェッショナルとしての監査を行うものでありまして、独立性を持って判断されるものである以上、個別の監査に、監査法人の判断に関与する立場には実は政府はないわけでございます。この点は、ぜひ当事者間でしっかりと説明責任を果たしていただきたいというふうに思います。

○遠藤(乙)委員 確かに、監査法人、米国でも大問題になっていたわけでありますけれども、今後日本におきましても、ぜひ、監査法人の監査あるいはまた説明責任はしっかりと問う体制をつくるべきだと考えております。

 そこで、今回の措置は、株主の責任を問うということが非常に大きな特徴でありまして、先ほども申し上げましたように、地元の株主の株が全部いわば紙くずになったということが大きな特徴でありまして、これは大変地元に大きな衝撃を与えております。

 今回、足利銀行の資産増強のために、地元だけでも七百二十七億円という株が購入されており、一万五千件に達する。自治体、企業、個人も含めて、いわばオール栃木で応援団として今回株を買っているわけであります。だれも、収益性を期待して買っている人はほとんどいないわけでありまして、足利銀行がつぶれちゃ困る、何とか立ち直ってほしい、そういった意味で、応援団として、あるいはまた借り手の立場で、説得されてやむを得ずおつき合いで買った人もいるわけでありまして、株の購入動機はいわば応援団としてのものであるということを理解していただきたいわけであります。

 したがいまして、株式だから株式だということで単純にこれを割り切ることは極めて大きな問題があり、また、現実的にも負の資産効果が極めて大きいということをそんたくする必要があるわけでありまして、この問題に対する対応策あるいは救済策がぜひとも必要であると思いますけれども、具体的にどういったことを考えられるのか、大臣の見解を伺いたいと思います。

○竹中国務大臣 足利銀行という、地域で五割のウエート、シェアを持っている金融機関に対して地元の方々が出資を行ってこれまで支えてきたという経緯は、大変我々もよく存じ上げております。そうした観点から考えますと、これは、債務超過でありますから、実質的な一株当たりの資産がマイナス、ゼロになっているということで、今回の措置になっているわけでありますけれども、心情的にはやはり極めて遺憾なことであり、その地域への影響というのは大きいというふうに私たちも実感をしております。

 そうした観点から、先ほどから申し上げておりますように、関係省庁の連絡会議等々でも、その資金繰りの点等々でどのような措置がとれるかということを全省庁を挙げて今検討しているところであります。法律的な問題、それと、現実のやはり問題の大きさ、そういうものをしっかりと踏まえて、何ができるかということを積極的に、前向きに、あらゆる手段を考えていきたいと思っております。

○遠藤(乙)委員 ぜひとも、具体的な救済策を早急に検討していただき、できる限りの措置をとっていただきたいとまず要望するものでございます。

 そこで、この今回の措置につきましては、私ども、大変大きな疑問を持ってはおりますけれども、こういう措置を決断した以上は、余りそういうことを云々してもしようがないわけなんですけれども、今後の未来志向の問題として、どうやってこの地域の金融システムを立ち直らせていくか、これが大きなテーマであると思います。

 そういった意味で、まず具体的に問題なのは、今、経営監視チームが派遣されておりますけれども、本格的に来る役員の選任、具体的な経営陣のリーダーシップ、経営感覚、能力というものが大変問われるわけであります。特に今回の問題は、地域の経済の再生のためにどれだけ役に立つかということが一番のポイントでありまして、そういった意味では、役員には、地域の実情に精通し、また、地域の経済の活性化にさまざまな努力ができる、そういう経営陣でないとならないと思うわけでありますが、この点につきまして、どういう段取りでどういう役員選任をするのか、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

○伊藤副大臣 今御指摘がございましたように、まず私たちは、ガバナンスの空白をつくらないために、今、経営監視チームを派遣させていただいて、融資を受けられる企業が融資が受けられないような事態がないように、万全の対策を講じているところでございます。

 今、先生御指摘のとおり、できるだけ早く新経営陣を選任していかなければなりません。その新経営陣の選任に当たっては、この三号措置の趣旨を徹底していけるように、その能力のある人を選んでいかなければいけないわけでありまして、そうした視点から今作業を進めさせていただいているところでございます。

○遠藤(乙)委員 能力は当然なんですが、特に、地域の実情に精通し、地域の活性化に役立つ人ということが大変ポイントであります。この点、もう一回確認したいと思います。

○伊藤副大臣 これは、先生の御指摘も含めて総合的に判断をして、しっかりとした経営陣の体制をつくっていかなければなりません。その経営陣の体制をつくるに当たって、地域の問題に精通している方も必要でありましょうし、また、中小企業の問題について精通される方も必要であります。本当の、金融の問題について、これはもう経験と能力のある方々の選任も大変必要であると思います。さまざまな観点が必要でございますから、そうした観点を総合的に勘案して、大至急、人選を進めていかなければいけないというふうに思っております。

○遠藤(乙)委員 ぜひ、最善のチームを選んでいただくよう強く希望しておきます。

 もう一つは、受け皿銀行の問題なんですが、これもやはり、地域の活性化に役立ち、きめ細かなサービスが引き続き提供できる銀行でなければならないと思っておりまして、余り利益だけを求めるような、そういった銀行では地域としては困るというのが地域の強い声でございます。

 そういった点で、この受け皿銀行の、新聞等では既にいろいろな名前が挙がってきておりますけれども、どういう段取りで、どういう期限で、またどういう性格の受け皿銀行を考えているのか、これにつきまして大臣の見解をお聞きしたいと思います。

○伊藤副大臣 これも先ほどから議論になっておりますが、今の時点でこの受け皿のあり方、見通しというものを述べることは大変困難な状況でございます。

 私どもとしましては、先生の先ほどの御指摘のように、できるだけ早く経営陣を選任して、そして、新しい経営陣のもとで、やはりまずこの銀行の健全化に向けた経営改革というものを進めていかなければなりません。それを進めるとともに、できるだけ早く、法の趣旨に基づいて、受け皿を確保することが望ましいと考えているところでございます。

○遠藤(乙)委員 ぜひとも、その趣旨を体して、よい、地域のために役立つ受け皿を選定してほしい、強く要望しておきたいと思います。

 最後になると思いますが、今回の問題、足利銀行の問題、単に足利銀行、栃木県の問題というよりも、日本全体の、地方経済の象徴的な事件であったと私は思っております。一部に景気は持ち直しているとの見方もありますが、これはあくまで一部の、局部的な問題でありまして、日本の地方、中小零細企業あるいは商店街というのは大変な疲弊のきわみにあって、いまだ景気の回復の光が見えないという大変深刻な状況にあるということをまず知っていただきたいと思っておりまして、今回のケースは、何としても地域の金融システムの再生を果たし、地域の経済活性化、発展をぜひとも成功させなければならない、大変な重大なテーマであると思っております。

 そういった意味で、今回の足利銀行の問題を踏まえ、今後の地域経済、栃木県を含めた地域の経済の活性化に向けての大臣の決意、具体的なビジョンをお聞きしたいと思います。

○竹中国務大臣 地域経済をめぐる問題、構造的な深刻な問題を抱えているということに関しては私たちも十二分に認識をしているつもりでございます。地域全般に関しては、そうした観点から、地域再生本部をつくって、地域再生の担当大臣も置いて、内閣全体として取り組む、そのような非常に強い決意を持って臨んでいるところでございます。

 とりわけ、今回の栃木県をめぐる問題に関しては、先ほどから議論していただいていますように、今回の三号措置をもって、この銀行が、地元の銀行が日本を代表するリレーションシップバンキングの代表格の銀行に生まれ変わっていただくというのがやはり何よりも重要なことだと思っております。

 その意味では、一番重い措置をとったんだ、一番重い責任を政府が負ったんだという御指摘がございましたが、まさにそのとおりなんだと思っております。強い決意で、地域再生本部を活用して地域全体を再生させる、とりわけこの栃木県に関しては今回の措置の趣旨を生かすように最大限の努力をする決意でおります。

○遠藤(乙)委員 もう一点だけ。
 今回、百二条の三号措置が発動されたわけですけれども、やはり、特に地域の金融システムの問題に対してこの百二条の対処システムはまだまだ問題が多いんではないか、欠陥があるんではないかというふうに思います。特に、いきなりハードランディングをとらざるを得なかった、そういうルールは極めて欠陥が多いと私は思っておりまして、この点について、どういった改善の方向があるのか、大臣としてどのように考えられるのか、最後にお聞きしたいと思います。

○竹中国務大臣 金融システムを強化するために、とりわけ地域の金融システムを強化するために、リレーションシップバンキングの趣旨にのっとって、さまざまなことを今後も強化していかなければいけないと思っております。その中で、とりわけ、資本の増強をどのように考えていくかというのは、今回の百二条の問題も絡めて、やはり欠かすことができない重要な問題であると認識しております。

 これは以前からいろいろなところで御検討をいただいて、金融審等々でも御検討をいただいておりますけれども、今の預金保険法百二条で十分足りるという御意見が専門家の間でもある一方で、何らかの予防的な措置が必要でないかという強い意見も専門家の間である。私自身は、やはり何らかの新たな枠組みが必要なのではないかというふうに考えております。

 この点は、今、与党の皆様とも勉強させていただきながら、前向きにしっかりと対応していく必要があるというふうに思っております。

○遠藤(乙)委員 今回の足銀の件、栃木県の件をぜひとも成功例にすべく、大臣以下、政府関係機関の最大限の努力を期待いたしまして、私の質問といたします。
 以上です。


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