第145回国会 本会議 第14号


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平成十一年三月十二日(金曜日)
正午開議

○遠藤乙彦君 私は、公明党・改革クラブを代表して、ただいま議題となりました日米ガイドライン関連諸法案について、小渕総理大臣及び関係閣僚に質問いたします。

 ガイドライン関連法案は、昨年の四月、国会に提出されて以来、ほぼ一年が経過しています。これまでの間、またそれ以前の段階を含めて、既に討議に多くの時間が費やされ、さまざまな多岐にわたる論点が議論されてまいりました。

 しかしながら、国民の目から見ると、これらの国会論議は極めてわかりにくいものと言わざるを得ません。その最大の理由は、冷戦後のアジア太平洋地域において、より堅固な平和の構造をどのように構築していくのか、そしてまた、日本の安全保障のあり方そのものをどうすればよいのかという基本的な問いかけに対して、日本のとるべき平和戦略のビジョンや全体像を示すことなく、個別的、部分的、専門的な議論だけに終始しているからではないでしょうか。

 また、政府の姿勢が、米国の要求にどう対応するのかというだけの、従来の受動的な日米関係のパターンから少しも脱しておらず、日本として、どう主体的にアジア太平洋地域における平和の構造の構築にかかわっていくのかという、構想力や意思が全く感じられません。また、幅広く国民に理解を求め、国民的合意を形成していこうという真摯な努力が欠けているからではないでしょうか。

 そのため、ガイドライン関連法案については、国内的にも国際的にも著しくアカウンタビリティーが欠如しており、いたずらに不安と疑心暗鬼を助長するという面も否定できません。政府には、ぜひともアカウンタビリティーを向上させる努力を強く望むものであります。

 また、従来の我が国の安全保障論議は、常に国論が分裂し、イデオロギー的に偏向したり、現実を直視せず、不毛な論争を繰り返してきたという不幸な歴史があります。九〇年代に入って、冷戦構造の崩壊や湾岸危機、PKOへの参加等の経験を経た今、従来より一味も二味も違った、現実的かつ建設的な安全保障論議が行われてしかるべしと考えます。

 今国会においては、与野党ともに二十一世紀のアジア太平洋地域と日本の将来を見据え、地域の諸国、諸民族の共生と繁栄の前提条件である永続的な平和の確立に向けて、現実的な基盤に立った、幅広くかつ慎重な安全保障論議が行われることを強く望みたいと思います。(拍手)

 そこで、まず総理にお伺いいたします。
 冷戦後のアジア太平洋地域における総理の国際情勢の基本認識はいかなるものか、そして日本のとるべき平和戦略とはいかなるものであるべきか。また、その中で、ガイドライン関連諸法案の整備はいかなる位置づけになるのか、そして、なぜ今それが必要なのかということについて、わかりやすく説明していただきたいと思います。

 目下のところ、東アジアにおいては朝鮮半島情勢、とりわけ核開発やミサイル開発を進める北朝鮮をめぐる情勢が、最大の焦点の一つとなっております。
 米国は、従来、北朝鮮に対していわゆる関与政策を進めてきていますが、伝えられるところによると、ペリー前国防長官を中心に北朝鮮政策の見直しを進めている由であり、また、金大中韓国大統領は太陽政策を推進しております。総理は既にペリー調整官と会談し、さらに十九日から訪韓する予定と聞いておりますが、日本としてどのような北朝鮮政策、外交を推進しようとされているのか、お伺いいたします。

 次に、新ガイドライン関連法案についての近隣諸国の反応について伺います。
 平和憲法のもと、海外派兵は行わず、自衛目的以外には武力を行使しないという我が国の方針は、近隣諸国は言うに及ばず、世界各国にも定着してまいりました。
 しかしながら、新ガイドライン策定を機に、一部の国からは、我が国の安全保障政策を懸念する声が聞こえるようになりました。中国に加え、最近ではロシアからも、ロシアを含めて第三国の領土を周辺事態の適用範囲に含めることは認められないとの懸念が表明されております。これ以外にも、懸念を表明している国はあるのかどうか、また、これらの懸念に対し政府はどのように対処しようとしているのか、総理の御見解を伺います。

 続いて、個別的問題についてお伺いいたします。
 まず、周辺事態の概念についてであります。
 政府は、周辺事態法案の第一条において、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態との定義を行っています。政府は、さらにこの概念について、従来より、地理的な概念ではなく、事態の性質に着目した概念であるとの説明を行ってきましたが、途中から、あらかじめ一定の地域を明示できるような意味での地理的概念ではないが、地理的要素を全く含まないと言っているわけではないと変わってまいりました。率直に言って、一体何のことを言っているのか、理解しがたい概念と言わざるを得ません。

 そもそも、地理的用語である周辺という言葉を使っているのに、地理的概念ではないと否定することは、矛盾も甚だしく、まことに不適切な言語の使用と言わざるを得ません。このような不適切な言語の使用法が、無用な誤解と混乱を招いているのではないでしょうか。もし政府の説明を矛盾なく表現するネーミングを行おうとするならば、周辺事態ではなく、例えば重要事態とか緊急事態とかいった用語を使うべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 また、周辺事態の定義についても、我が国の平和及び安全に影響を与える重要な事態と、極めて一般的なものであり、解釈する人の主観によって大きな開きが出てくる可能性があり、いかようにも拡大解釈が可能な定義であると言えます。これでは、国内的にも近隣諸国に対しても、無用な疑念を与えることになるのではないでしょうか。我が国の領土以外での自衛隊の出動にかかわる問題である以上は、認定基準や認定理由をより明確にする必要があると考えますが、総理の御見解を伺います。

 また、平和憲法を遵守する意味においても、さらに、アジア近隣諸国の疑念を消し去る意味においても、自衛隊の海外派兵は行わないとの意思を、内外ともに改めて明確にする必要があります。そのためには、自衛隊の活動を日米安保条約の枠内とすることを周辺事態法案に明記する必要があると思いますが、総理の御見解を伺います。

 次に、周辺事態に際して、国会の関与のあり方についても総理の御見解を求めます。
 国会の関与については、周辺事態法案の第十条で、内閣総理大臣は、基本計画の決定または変更があったときは、その内容を遅滞なく国会に報告しなければならないとしているのみであります。自衛隊の防衛出動あるいは治安出動については自衛隊法の第七十六条及び七十八条で、また、いわゆるPKF業務を行うための海外派遣の際にはPKO法の第六条で、いずれも国会の事前または事後の承認が必要とされています。

 我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、すなわち、我が国に対する武力攻撃にも発展する可能性がある事態、または我が国に直接被害を及ぼす可能性がある事態において自衛隊の活動を認めるに際し、国会の行政府に対する民主的コントロールはぜひとも必要であり、国会の承認は、自衛隊法第七十六条及び七十八条並びにPKO法第六条との整合性からいっても、当然必要であると考えますが、総理の御見解を伺います。

 次に、周辺事態において自衛隊が戦闘に巻き込まれる可能性の有無について伺います。
 自衛隊の米軍に対する支援が法案に言う後方地域支援であるとはいえ、関係国からは、武力行使を行っている米軍の兵たんを自衛隊が担い、このことから、我が国も交戦国であると見られないかと懸念されます。国際法上、兵たんを担っている国は交戦国であると考えられないのか。そして、兵たんを担っていることを理由に、軍事攻撃を行う根拠を与えることにならないのか。また、周辺事態において米軍に対し武器弾薬、兵員等の輸送を行うということは、兵たんを担うとは言えないのか。外務大臣の御見解を伺います。

 次に、物品役務の相互提供の実績について伺います。
 新ガイドラインとの関連において、現行ACSAの改正協定の承認が求められております。現行ACSAの発効以来二年半が経過しておりますが、これまでいかなる物品または役務が相互に提供されたのか、その実績について、また、今改正でACSAに関する米軍の要望は満たされることになるのかどうか、今後新たな改正の余地があるのかどうか、防衛庁長官に伺います。

 最後に、地方自治体や民間の協力について伺います。
 まず、協力要請を断った自治体への制裁の有無についてです。今までの政府答弁からは、協力要請を断った自治体に対しては、積極的ではなくとも、何らかの制裁を科すことを視野に入れていると受け取ることも可能です。政府としてはこの点をどのように考えているのか、総理の見解を伺います。

 また、政府は、二月の初めに、具体的な協力内容として十項目を例示する文書を、米軍基地のある地方自治体等に示しております。しかしながら、これをもって十分な措置であるとは言いがたいことは政府も認めるところであると思います。

 我が国の平和と安全を全うすることを眼目に、的確に迅速な協力を得るためには、要請する協力内容はできる限り具体的で明確なものとすると同時に、地方自治体や民間との十分な対話を重ね、理解を得ながら作業を進めていくという姿勢が政府には強く求められるものでありますが、今後いかなる方策をとろうとしているのか、総理の御見解を伺います。

 以上、基本的な問題に絞って質問いたしましたが、重ねて政府の明快な答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕

○内閣総理大臣(小渕恵三君) 遠藤乙彦議員にお答え申し上げます。
 まず、国際情勢に対する認識と我が国の戦略について、お尋ねがございました。
 冷戦後もアジア太平洋地域には依然として不安定、不確実な要素が存在しておると考えます。このような状況におきまして、我が国は、日米安保体制を堅持し、節度ある防衛力の整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定の確保のための外交努力を行うことを安全保障政策の基本といたしておりまして、今後ともこれを堅持してまいりたいと考えます。

 日米防衛協力のための新関連法案の位置づけ、及び同法案の必要性についてのお尋ねであります。
 冷戦終結後も依然として不安定性と不確実性が存在する中で、我が国の平和及び安全に重要な影響を与えます周辺事態に際する日米協力の枠組みを構築しておくことの重要性は、論をまちません。このような日米協力の枠組みとして、本法案は、日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものであると考えます。政府といたしましては、これらが早期に成立または承認されることを強く願っておるところであります。

 次に、北朝鮮政策についてのお尋ねがございました。
 私は、北朝鮮問題につきましては、先日訪日をいたしましたペリー北朝鮮政策調整官と意見交換を行い、また、近く韓国を訪問し、金大中大統領ともこの問題につきまして話し合いたいと思っております。
 政府といたしましては、今後とも、米国及び韓国と緊密に連携しつつ、ミサイルや核施設疑惑に関する北朝鮮をめぐる国際的な懸念の解消や、日朝間の懸案の解決に努めてまいりたいと思います。また、北朝鮮がこれらの問題に建設的な対応を示すならば、我が国としては、対話と交流を通じ関係改善を図る用意があることは、申し述べておるところであります。

 次に、新たな日米防衛協力のための指針への周辺諸国の反応についてお尋ねがありました。
 新指針につきましては、中国とロシアに対しまして、江沢民主席やイワノフ外相の訪日等、累次の機会に説明を行ってまいったところでございます。このほかに懸念を表明している国があるとは特に承知をいたしておりませんが、政府としては、今後とも、関心を有する諸国に対し、必要に応じ十分説明を行っていく所存でございます。なお、北朝鮮は一貫して指針関連法整備を非難しておると承知をいたしております。

 周辺事態についてお尋ねがありましたが、我が国の平和と安全に重要な影響を与えます周辺事態は、その規模、態様等を総合的に勘案して判断するものであり、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできないという意味で、地理的概念ではありません。
 この点につきまして、これまでも繰り返し説明し、明らかにいたしておるところでございまして、周辺事態という用語につきましては、先ほど重要あるいは緊急というお話がございましたが、これまた概念を規定することが極めて難しいことでございますので、政府といたしまして、周辺事態という用語につきまして、ぜひこれを御理解いただきたいと思っております。

 周辺事態の認定基準等についてお尋ねがありましたが、ある事態が周辺事態に該当するか否かにつきましては、事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断することとなります。この際、周辺事態安全確保法に基づき特定の対応の措置を実施する必要があると認められる場合には、周辺事態の対応の重要性にかんがみ、内閣総理大臣は、基本計画の案を策定し、安全保障会議における審議を経て、閣議の決定を求めるという手続を経ることによりまして、その対応に遺漏なきを期してまいりたいと考えております。

 周辺事態安全確保法と日米安保条約との関係についてであります。
 日米安保条約は我が国及び極東の平和と安全の維持を目的といたしまして、周辺事態安全確保法案は我が国の平和と安全の確保に資することを目的としていることから、同条約の目的の枠内と言うことができます。また、同法案第三条第一項第一号でも、周辺事態におきまして我が国からの協力の対象となる米軍は、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍であることを明記いたしておりまして、本法案が同条約の目的の枠内であることは明らかであります。
 なお、自衛隊の主体的活動も、かかる周辺事態の対応措置であるという意味で、安保条約の目的の枠内と言えます。

 周辺事態安全確保法案の基本計画を国会承認とすべきであるという御指摘でございます。
 先ほど申し上げましたが、周辺事態への対応は、武力行使を含むものでないこと、国民の権利義務に直接関係するものでないこと、迅速な決定を行う必要性があること等を総合的に勘案いたしますれば、防衛出動やPKF本体業務の実施とは異なるものであり、基本計画を国会に遅滞なく御報告し、議論の対象としていただくことが妥当と考えておりますが、何とぞ国会におきまして十分な御審議もいただきたいと思っております。

 地方公共団体の協力についてお答えいたします。
 同法案では、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態への対応の重要性にかんがみ、地方公共団体の長に対して、その権限の行使について必要な協力を求めることができる旨規定いたしております。これは、あくまで協力を求めるということでありまして、協力を強制するものではなく、協力を拒んだことに対して、本法案に基づき制裁的な措置をとることはありません。

 地方公共団体等の理解を得るための方策についてであります。
 協力の内容につきましては、事態ごとに異なるものでありまして、あらかじめ具体的に確定される性格のものではありませんが、本法案につきましては、特に地方公共団体の関心が高いものと承知をいたしておりまして、政府といたしましては、これまでも要望に応じて、協力の内容等につきまして、できる限り具体的に説明を行ってきたところであります。今後とも、一層の理解を得るため、さまざまな機会をとらえて、引き続き説明してまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    
〔国務大臣高村正彦君登壇〕

○国務大臣(高村正彦君) 米軍に対する後方地域支援についてのお尋ねでありますが、そもそも交戦国とは、戦争が合法であった伝統的な戦時国際法のもとで発展した概念であり、国連憲章のもとでは、違法な武力の行使に対し国連憲章に従って対処している国に支援を行うことは、国際法上何ら問題はありません。

 また、法案では兵たんなる語は用いておりませんが、法案で想定される輸送を含む後方地域支援は、それ自体武力の行使に該当せず、また、後方地域において行われる行為であり、米軍の武力の行使との一体化の問題が生ずることも想定されません。したがって、このような協力は、他国の武力攻撃を正当化させるものではありません。(拍手)
    
〔国務大臣野呂田芳成君登壇〕

○国務大臣(野呂田芳成君) 現行の日米物品役務相互提供協定の実績についてのお尋ねでございますが、同協定が平成八年十月二十二日に施行されてから本年一月末までの間に、日米共同訓練のために、自衛隊と米軍の間で、輸送、燃料、航空機部品などの物品または役務の相互提供が約四百七十件行われているところであります。

 また、日米物品役務相互提供協定の改正協定についてのお尋ねでございますが、同協定につきましては、新たな指針の実効性を確保するため、周辺事態が生じた際の自衛隊と米軍との間の物品役務の提供について、相互のニーズを精査し、米国との協議を重ねた結果、改正する協定の内容について日米双方が合意したものであり、米国の要望は十分に満たされるものと考えております。(拍手)



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